担任になるまで、あたしはマキノの存在すら知らなかったが、もしかしたらすれ違ったことくらいあるのかもしれないな。
爽やかにテニスするイメージなんて一ミリもない。いや顧問だからってコートに立つとは限らないか。
「なにか、あったのかな」
若菜が顎に手をあてて考えているが、まったく興味ない。マキノなんてどうでもいい。
大地くん元気かな。
「奥さんに逃げられた。とか」
適当に答えると、
「ありえる」
若菜が苦笑いする。
「写真とろ、若菜」
「彼に送る?」
「もちろん」
「ならピンで撮ったげるよ。ホーム画面にしてもらったら」
「してくれないよ。さすがに」
メイドの女の子を設定するのは、女子高生よりもハードル高い気がするよ。
「わかんないよ。ベッドで横になったとき見える場所に美香とのプリクラ貼ってたりしてね」
「まさかあ」
「今すぐ一緒になりたいって思ってるのは。案外向こうかもよ」
「そうだといいな」


