「いやいや。あたし、理解ある女になる!」
「なにいってんだお前」
「そういやマキノって結婚してたっけ」
「先生つけろや」
「やだ。マキノは生徒に敬語使わないでしょ。呼び捨てにもするし。なのに、あたしに強要するのおかしいよ」
「それもそうか」

 納得されてしまった。調子狂う。
 生意気とか言われると思ったのに。

「で。理解ある女ってのは?」
「好きな人に子供って思われたくないんだよね」
「相手は年上か」
「二十代。……半ば」

 特定されるようなことは言わないでおこう。大地くんと個人的な付き合いがあることは若菜と海月さんにしか知られていない。
 いや、パパとモトナリも知ってるか。山田さんも。

「なんだお前。俺のこと好きなのか」
「バカなの?」
「社会人の彼氏ねえ」
「付き合ってないよ。両想いだけど」
「ロリコンか」
「愛があれば年齢なんて関係ないもん。ていうかマキノそんな若かったの?」

 目の前の、ヨレたシャツに無精髭の男をまじまじと見つめる。

「わるいか」
「……オッサン」
「大人の色気といえ」

 色気なんて微塵もない。