「今年も年末年始、開けてるんだね」
「他にやることもありませんからね~」
さらっと答える海月さんだけど、一人でお店を切り盛りするのがどれだけ重労働か、働き始めて間もないあたしにだってわかる。
それから3組のお客さんが来店して帰っていくまでのあいだ、カウンターで山田さんはお酒を飲み続けていた。
「ちょっと飲み過ぎじゃないです?」
「今夜くらいはねぇ」
すでに出来上がっていそうな山田さんが、カウンターに顔を突っ伏す。
「風邪ひきますよ」
山田さんに上着をかける、海月さん。
しばらくして息子さんが車で迎えに来た。大地くんより少し上くらいの爽やかな男性で、あたしを見て「あなたが美香さんですか。父ったら、年甲斐もなく、あなたに会うのが楽しいみたいで。ご迷惑おかけしてます」なんて言ってお辞儀された。
今日は山田さんの奥さんの命日なんだそうだ。
今夜くらいは、という山田さんが残した言葉に重みが増す。
「山田さんは、もしも今も奥さんと一緒にいられたら。夫婦でゆっくりお酒を嗜みたかったんでしょうか」
「そうね」


