オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。


 大地くん本人も、今は、詳しいことはわからないのかもしれない。
 話せないこともあるはず。

「わかった」

 デートは、ここで、おしまい。

「ちょっと待って下さい。美香さんを置いていくつもりですか」

 モトナリが大地くんを睨む。

「いいの。あたしは、大丈夫だから。すぐに向かわなきゃなんだよね?」
「ああ。行ってくる」

 周りのムードと一転、あたしたち3人に、はりつめた空気が流れる。

「なにが、守るですか。偉そうなこといって――」
「モトナリ」
「気安く名前で呼ばないで下さい」
「美香のこと、頼む」
「……は?」
「守ってやれるよな。ねーちゃんのこと」

 モトナリが、目を見開く。

「あんま遅くならないうちに送ってやってくれ。できるな?」
「あなたの家でなく、うちに連れて帰りますけど」

 勝手に決めないでくれるかな。
 今夜も海月さんのお店に立つつもりなんだから、予定狂わせないで。

「それでいい。美香、家に着いたら連絡入れといてくれ。心配だから」
「……うん」
「いつ見れるかわからねーけど。必ずな」
「はやく向かって」
「埋め合わせは。必ずする」
「大地くん」

 気をつけてね、って言うべき?
 頑張れって応援するところ?

「いってらっしゃい!」
「ああ。いってくる」