オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。


 好きな人との時間が、大切なことも。

「……死ぬほどわかります」

 この偏屈少年に好かれる女の子は、どんな子なのやら。

「あたしと仲良くしなさい」
「それは。あの男のためですか」
「そうだけど、そうじゃなくても家族なんだから」
「僕は美香さんのこと。姉だと思ったことありませんよ」
「わかってるよ」

 認めたくないんでしょ。
 優秀なあんたは、あたしみててイライラする?

「全然わかってないです」
「は?」
「家族になんて。なれませんよ」
「なる気ないもんね」
「そうじゃなくて」
「なに」
「美香さんは。……知らないから」

 そうつぶやき、あたしを見つめるモトナリの瞳が揺れる。

「知らないって。なにを」
「僕のこと半分血の繋がった、義理の弟だと思ってますよね」
「思うもなにも。そうじゃん」
「ちがうんです」

 ……ちがう?

「あ、大地くん」

 戻ってきた大地くんは、手になにかを持っていた。

「それなに?」
「つけろ」