「先生からこれだけはお願い。心が限界になる前に周りにSOSを出すの。親でもいい。先生でもいい。友達でもいい。誰かに話して?そうしないと辛くなりすぎてしまうから」

「そんなの……聞いてくれる人なんていないよ……」

「じゃあ、先生に話して?先生の電話番号、渡すわ。もうあなたと私は生徒と教師じゃない。だから、いいわよね。個人的に連絡を取っても。もし辛くなったらいつでも電話して?ねっ?」

「いいんですか?」

「もちろんよ。あっ、でもそれ、失くさないでね?先生SNSとかやっていないから連絡がつかなくなっちゃうから」

「なくしません。絶対に……」

先生はバッグから手帳を取り出すと、紙に自分の電話番号を書いてわたしに手渡した。

「林さん、時には相手を怨みたくなる気持ちもあると思う。やり返してやりたいとか、そんな風に思ってしまうこともあるかもしれない。だけど、復讐なんてしちゃだめよ。相手にやり返したところであなたは絶対に救われない。イジメなんて卑劣な真似をする人間と同じような人間になったらダメ。それだけは約束よ?」

「はい……」

「大丈夫。あなたはまだ若い。辛いこと以上に楽しいことがたくさんあるから。これから先の未来はきっと明るいはずよ」

励ましの言葉に頷くことだけで精いっぱいだった。

嗚咽交じりに泣きじゃくるわたしの背中を先生は優しくさすってくれた。