「なんでこんなことに……」

頭の中は混乱していた。

昇降口で靴を履き替えようとした。

でも、今朝確かに履いてきたはずの革靴がない。

もう誰がわたしの靴を隠したのか、それとも捨てたのか想像もつかない。

わたしをイジメるのはカスミちゃんだけだと思っていた。

でも、違った。カスミちゃんだけでなく佐知子かもしれないし、その友達かもしれない。

仲の良い振りをしているけど、実は真紀かもしれない。

その可能性だってある。今日初めてケンカのようになったし、その腹いせに靴を隠したということも考えられる。もう誰も信じられない。

誰のことも頼れない。わたしに味方はもう誰一人としていない。

「ハァ……」

ため息しか出てこない。

あまりのストレスに胃がキリキリと痛み、今にも倒れそうだ。

仕方なく体育用の白い外履きシューズに履き替えて昇降口を出る。

すると、職員玄関から出てくる見覚えのある姿が目に付いた。

あれは……伊藤先生だ。

退院したという話は風の噂で耳にしていた。

でもまさか先生が学校にいるなんて……――。