「えっ……?」

薄々気付いてはいた。カスミちゃんが見せていた動画は昨日うちで撮影されたものだって。

わたしはなんて答えたらいいのか分からず引きつった笑みを浮かべることしかできなかった。

あんな動画面白くもなんともない。

やりたくないことを無理やりやらされて、動画に取られて、自尊心をひどく傷付けられた。

「ね、愛奈。佐知子の全力ダンス見たくない?」

「え?」

「愛奈よりももっとうまく踊ってくれそうだし。それにほら、ビジュアル的にもウケるよね。デブが激しく踊るのって」

カスミちゃんがクックと喉を鳴らして笑う。

困惑して佐知子を見つめる。佐知子はわたしと目が合うと、顔を歪めてふるふると首を横に振った。

やりたくない。踊りたくない。そんな彼女の強い気持ちが空気を通して伝わってくる。

「で、でももうすぐ授業始まっちゃうよ?」

わたしは必死の思いでカスミちゃんに抵抗した。

「は?まだ5分あるじゃん。3分ぐらいで踊れるでしょ?」

「で、でもさ選択授業で人も多いし、こんな狭いところであのダンスを踊ることはできないと思うんだ」

ちらりと佐知子を見る。

今にも泣きだしそうな表情を浮かべてすがりつくような目をわたしに向ける。