カスミちゃんが先生に足をかけたのは疑いようのない事実だ。

けれど、こんな状況になってもカスミちゃんは動揺するどころか得意げな表情を浮かべて勝ち誇っている。

「可哀想な赤ちゃん。ドジな母親持つと災難だねぇ」

人間の顔をした悪魔。

どうしてこんなひどい仕打ちができるのか理解できない。

脳の一部にどこか欠陥があるんだろう。そうとしか考えられない。

こんな悪魔に目をつけられたら最後だ。

先生だってカスミちゃんに目を付けられなければこんなことにはならなかっただろう。

今日までのカスミちゃんのターゲットは先生だった。

じゃあ、明日からは……?

明日からは誰がカスミちゃんのターゲットになるの?

「い、伊藤先生!!大丈夫!?もう救急車呼んでるから!頑張れ、もう少し頑張れ!!」

教室に飛び込んできた他の先生が血の気を失い顔面蒼白の伊藤先生を必死になって励ます。

クラス中が固唾を飲んでその光景を見つめる中、カスミちゃんはポケットから取り出したスマホで何やら操作をしていた。

そのとき、ポケットの中のスマホが震えた。

薄々気付いていた。カスミちゃんはきっとわたしにメッセージを送ってくるだろうと。

【カスミちゃん:先生に何かあったら全部アンタのせい】

【カスミちゃん:アンタがあたしの言うこと聞かないからこうなったんだよ?】

【カスミちゃん:赤ちゃん死んだら、アンタ人殺しだから】

わたしが……カスミちゃんの命令に従わなかったから……?

もし従っていたら先生に足をかけたりしなかった?そうすれば、先生はこんなことにならずにすんだ……?