「やだ、どうしよう……先生……!」

一人の女子が錯乱を起こしたように叫ぶ。

違う女子は貧血を起こしてしまったのかその場にヘナヘナと座り込んでいる。

教室中が異様な雰囲気に包み込まれていた。

恐怖でガタガタと体を震わせているわたしの足は棒のように突っ張ってしまい自分の意思で動かすことができない。

助けを呼ばなくてはいけないと分かっているのに、ただ立ち尽くすことしかできずにいた。

「お願い……誰か……!」

先生が懇願する。

「――あたしが呼んでくる!!」

教室を飛び出していったのは真紀だった。

普段はぼんやりしていることも多いし、ふわふわしている雰囲気だけど真紀はこういう時頼りになる存在だった。

真紀の言葉に先生はほんの少しだけ安堵したように見えた。

「どうしよう……先生が……どうしたらいいの?」

みんな一様に不安そうな表情を浮かべて慌てふためく中、一人だけ冷静さを保っていた人間がいた。

カスミちゃんだ。

カスミちゃんは平然と足を組んだまま先生のことを見下ろした。

その口元は緩み、わずかな笑みを浮かべていた。

「先生、お腹に赤ちゃんがいるんだったら、もっと足元に注意しないとダメじゃない」

お腹に赤ちゃんが……?先生、妊娠していたの?

みんなカスミちゃんの言葉に顔を強張らせていた。