イジメ返し―新たな復讐―

「ねぇ、今日の昼何食べる?」

「うちはパン。カスミは~?」

「んー、何にしよっかな」

まるで休み時間や昼休みのようなカスミちゃんと志穂ちゃんのこの会話は国語の授業中に行われていた。

カスミちゃんが先生の授業をボイコットし始めてから早2週間。最初は注意をしていた伊藤先生もお手上げの様子で二人を無視して授業を続けている。

とはいっても、まともな授業になるはずもない。

カスミちゃんから指示を出されたクラスメイト達は真面目に授業を受けることなど許されていない。

クラスの中にはカスミちゃんの指示を疎ましく思う人もいたはずだ。

高校二年生の大事な時期を無駄にしたくないと考えても何ら不思議ではない。

でも、もしそれをカスミちゃんに言おうものなら今度は自分がターゲットにされてしまう。

カスミちゃんの指示にうまく従っているように見せかけて授業に耳を傾ける人もいた。

もちろんわたしだってそうだ。

わたしには目標がある。

大学に進学し、この町を出て一人暮らしをして自由な生活を手に入れる。

カスミちゃんにも親にも誰にも気を遣わない気ままな生活を送るんだ。

「……――ここまでで質問はありますか?」

黒板消しを置き、こちら側に振り返った伊藤先生の目の下にはクマができていた。