何気なく取り出す動作をしたとき、どこからともなく視線を感じた。

ふとその視線の先に顔を向けると、カスミちゃんと目が合った。

「え……?」

顔が引きつる。

カスミちゃんは右の口の端だけをクイッと上に持ち上げて意地悪な笑みを浮かべていた。

まさか。背中が急に寒くなる。

わたしは恐る恐る取り出したスマホ画面に視線を落とした。

【カスミちゃん:手挙げて伊藤の洋服ダサいって言って】

そのメッセージに目をむく。

スマホを持つ手が震えて頬の筋肉が痙攣する。

やっぱりカスミちゃんは昨日のことを怒っている。

【カスミちゃん:早く言えよ】

【カスミちゃん:言ったらアンタがあたしのことチクったこと許してあげる】

悪魔のささやきだった。