閉鎖的なこの地域には新参者はほとんどやってこない。

誇れる何かがあるわけでもないこの町にやってくるメリットもないし、仕方がないことだろう。

幼稚園から小中高と同じ顔触れが並ぶのも仕方がないことだった。

わたしの住む場所から一番近い今の学校ですら自転車で30分以上かかる。

もしも、違う高校を選ぶとしたら自転車と本数の少ないバスと電車を乗り継いでゆうに1時間半はかかるはずだ。

毎日登下校に3時間も費やすのは耐えがたかったため、わたしは渋々今の女子高に入学した。

でも、その選択を幾度となく後悔した。

カスミちゃんの存在があるからだ。

カスミちゃんは小学生の時に、この町に引っ越してきた。

元々は都内に住んでいたものの、事情がありこの町に家族で越してきたのだ。

初めて顔を合わせたのは小学校4年生の時だった。

転校生が来ると数日前から教室内はお祭り騒ぎだった。

女の子だと先生は言っていた。どんな子かな……。友達になれるかな……?

わたしも心のどこかでどんな転校生が来るのかとワクワクする気持ちもあった。

そこに現れたのがカスミちゃんだった。

教室にカスミちゃんが入ってきた瞬間、教室内の雰囲気がガラリと変わった。

騒いでいた子達も大人しくなり、みな一様に驚いたような表情を浮かべてカスミちゃんを見つめていた。