「一緒に呼び出したのは間違いだったかもしれないわね。源田さんがいたら林さんだって本当のこと言いずらいわよね」

「え……」

「とりあえず、話は分かりました。でも、もしまた次に何かおかしいことが起きたらそのときは……まぁ、次はないわね。しっかりと課題に取り組んでちょうだい。人の物や考えや努力を簡単に自分の手柄にする行為を先生は許せないだけだから」

先生は全て見透かしたような視線をカスミちゃんに投げかけた。

「なにそれ。ウゼェ」

低い声で呟いたカスミちゃんが先生を睨み付ける。

先生は微動だにせずカスミちゃんを見つめる。

二人の間に漂う険悪な雰囲気に胃がキリキリと痛む。

「先生、その嫌味な言い方直した方がいいんじゃない?そういう言い方するから生徒に嫌われてるんじゃん」

「ご忠告、ありがとう」

応えている様子のない先生からふんっと顔をそらすと、カスミちゃんは「愛奈、いこっ!」とわたしの腕を掴んで椅子から立ち上がらせた。

「っ……」

わたしの腕を掴むカスミちゃんの手に力がこもり、二の腕に痛みが走る。

カスミちゃんが怒っているのはすぐにわかった。

背筋が冷たくなる。カスミちゃんを怒らせた……。

怒らせてしまった……。

「し、失礼します……」

わたしは伊藤先生にぺこりと頭を下げると、カスミちゃんに引っ張られるようにして生徒指導室を後にした。