【源田カスミside】

「んー……」

もぞもぞと体を這う何かの感触に薄っすらと目を開けた。

時計の針は10時を回っている。そのとき、腹部を撫でつける手に気付いてとっさに布団から跳ね起きた。

「テメェ、何してんだよ!?」

立ち上がって乱れている服を直しながらあたしの布団に我が物顔で寝転ぶ中年男を睨み付ける。

「おいおい、カスミ。つめてぇ言い方すんなってぇ。久しぶりに会えたんだからさぁ」

酒の匂いをぷんぷんとさせボクサーパンツとタンクトップという季節感のない恰好をしている金城は酔っぱらっているのか頬を赤らめながらうつろな視線を向けた。

「あたしはアンタになんて会いたくない」

「お前は冷たい女だなぁ。お父さんに向かってそんな口聞くなんてよぉ」

「アンタはあたしの父親なんかじゃないでしょ!?」

金城とあたしは血が繋がっていない。

あたしが小学校の時、母親が浮気した不倫相手がこの金城だ。

金城が現れるまではそこそこの暮らしを送っていた。父親と母親とあたしの三人家族。仲が良いのかどうかは分からないけれど、特に不自由なく暮らしていた。

それから母親がひょんなことから金城と出会い、のめり込み、家庭をおろそかにしはじめた。

そんな母親に堪忍袋の緒が切れた父は母と離婚し、バカな母は父から解放されたと喜び金城との生活を選んだ。

その結果、あたしはこの縁もゆかりもない地に小学生で引っ越す羽目になった。