「実はね、愛奈ちゃんに大事な話があるの。しかも、いい話ではない」

「大事な話?」

「そう。これは絶対に口外しないで。イジメ返しは対象者にだけする約束、覚えているよね?エマは彼女や家族を傷付けるつもりは一切ないから。約束、守ってくれる?」

「もちろんだよ。わたし、絶対に言わないから。それで、話って?」

早くその話が知りたくてウズウズしてくる。

今度は誰の弱みだろう。誰の弱みを握ることができるんだろう。

人の不幸は密の味という言葉が頭をよぎる。

「実はね――」

わたしはエマちゃんの話に耳を傾けた。


「職員室、すごいことになってんだけど。電話ひっきりなしに鳴ってるって」

「朝のHR中止だって。1時間目も自習らしいよ。先生たちがマスコミとか親の対応に当たるんだって」

「マジ?ヤバくない?」

「まさか志穂ちゃんがね……」

今朝のニュースは瞬く間にクラスメイト達の間で伝わったようだ。

教室中がザワザワといつにもまして騒がしい。

わたしは涼しい顔をして自分の席に向かい、机の横にバッグをかけた。

すると、「愛奈、ちょっといい?」突然目の前に誰かが現れた。

聞き覚えのある声に顔を持ち上げる。

そこにいたのは顔を強張らせた真紀だった。

体調でも悪いのか、元々白い肌が更に白く感じる。

目の下のクマも気になった。