「た、助けて……」

暗闇の中、犬の散歩をしていた中年の男性が不審な動きをするあたしや紅蘭たちに気付き、視線を送った。

必死になっておじさんに手を伸ばす。

警察を呼んで。お願い。そうすればきっと助かる――。

「おい、ジジイ。チクったらテメェも犬もぶっ殺すぞ!!」

「ひぃ!!」

男たちに恫喝されたおじさんはそのまま背中を向けて走り去っていく。

愛奈はいつもこんな気持ちだったんだろうか。

あたしは愛奈がカスミにイジメられていても止めることなどしなかった。

自分が一番可愛かったから。自分が一番大切だったから。

たった一言だけでも『やめなよ』とカスミに言ったら、愛奈はあたしへのイジメ返しをしなかった……?

今となっては分からない。

ただ、一つだけ確かなことはこれからあたしは紅蘭や華、そしてガラの悪い男たちに酷いことをされるということだけ。

ズルズルと引きずられ、もう叫ぶ気力すら残っていなかった。

これはイジメを軽く考えていたあたしに訪れた罰なのかもしれない。

ただあたしは呆然と彼らのなすがままになり後悔の涙を流し続けた。