「アンタって男いないと何にもできないよね」

カスミがバカにしたように言う。

「別にそんなことないよ」

さらりとそう言ったものの、腸は煮えくり返っていた。

カスミは昔からずっとこうだ。すべて自分の意見が正しいのだ。

人の話に耳を傾けようとしない。

史上最強の自己中ワガママクソ女。

「カスミも男作ったら?」

「今は男なんていらない。アンタみたいに男に媚び売るのなんてまっぴらごめんだし」

カスミはそう言うと興味なさげに再びスマホを弄り始めた。

小学校の時、カスミが転校してくる少し前からあたしはクラスの中でほんの少しだけ浮いていた。

『志穂ちゃんってぶりっこだよね』『男好き』『色目遣ってる』

とクラスの女子があたしの悪口を言っていた。

幼稚園の時に初恋をしてからあたしはこれまで数多くの男を好きになった。

顔がカッコいいとか、勉強ができるとか、足が速いとか、理由は様々だったけれど、少し優しくされたりするとすぐにその人のことを好きになってしまった。

理由は分からない。でも、恋をしているときのキラキラとしていてドキドキする毎日があたしにとっては何よりも幸せだった。