このクラスはカスミちゃんのクラスと言っても過言ではないだろう。

カスミちゃんが右を向けばみんな右を向くし、カスミちゃんが左を向けばみんな左を向く。

反対を向くことなんて絶対に許されない。

そんなことをしてしまえば、待っているのはカスミちゃんからの情け容赦のない鬼のような攻撃だけだ。

カスミちゃんには誰も抵抗できない。

だって、カスミちゃんはこのクラスの女王だから。

「チッ、デブ。暑苦しいんだけど。何食ったらそんなに太れるわけ~?」

今日のカスミちゃんのターゲットはクラスで一番体の大きな佐知子(さちこ)のようだ。

ネチネチと嫌な言い方をするカスミちゃんに佐知子は顔を歪めながらもほとぼりが冷めるのを待つことしかできない。

言い返すことなく、じっと我慢する。

そしてカスミちゃんの興味が自分から反れるのを待つ。

きっとそれが一番賢い方法だろう。わたしだってそうする。

そうやってわたしはずっとカスミちゃんとの生活を送ってきたんだから……。

そう。カスミちゃんという悪魔と出会ったあの日から――。

わたしが暮らすこの街は人口1万人ほどの小さな町だ。

辺りを山に囲まれた自然豊かな町。

田舎特融の隣近所とのつながりも深く、ほとんどが顔見知りだ。