「なんだか愛奈ちゃん、楽しそう。気持ちが前向きになったの？」

「うん。だって、クラスでわたしの悪口を言う人がいなくなったんだもん！佐知子がいなくなって学校生活がすごく楽になったの！」

「そっか。よかったね」

「でもさ、佐知子のお父さんが痴漢していたのも、佐知子がお母さんに暴力を振るってたのもどうしてエマちゃんは知ってたの？」

「うん。色々調べるツテがあるの」

「そっか。すごいね。でもまさか佐知子のお母さんが自分から娘の暴力を告発するなんてね」

エマちゃんに大体の流れは聞いていた。

佐知子が早退したことを知り、エマちゃんも早退して佐知子の家を見に行くと佐知子が血相を変えて家から飛び出してきたらしい。

部屋には佐知子のお母さんが血を流して倒れていた。

救急車を呼び、家に救急隊がやってきたタイミングで佐知子のお母さんが目を覚ました。

「エマがお母さんにいったの。佐知子ちゃんが学校でイジメをしているって。お母さんだけでなく、クラスメイトにも暴力を振るっているって話した」

「そうなんだ……」

「佐知子ちゃんを思うなら、正直に話した方がいい。それが佐知子ちゃんの為になるからって娘の家庭内暴力を話すように促したの」

「さすがエマちゃん！すごいよ！」

心底そう思った。エマちゃんはすごい。人の気持ちを逆手にとることに長けている。