「あ、愛奈！！」

真紀がわたしの名前を呼ぶ。

わたしはカスミちゃんからも真紀からも逃げるように教室を飛び出すと、震える足に鞭を打ち、必死に走った。

昇降口を目指して走り続けていると前から歩いてきたエマちゃんと目が合った。

「あっ、愛奈ちゃん！今、教科書を返しに――」

「――ごめん、エマちゃん」

必死の形相で通り過ぎていくわたしをエマちゃんは不思議に見つめたあと、くるりと体を回転させてわたしのことを追いかけた。

「待って、愛奈ちゃん」

手首を掴まれて制止される。

慌ててエマちゃんの背後を確認したものの、カスミちゃんもクラスメイト達もわたしを追ってはきていなかった。

「帰るんでしょ？エマも急いで後を追うから。先に昇降口で待ってて」

「え……？」

「あとでね！」

エマちゃんは念を押してそう言うと、わたしの答えを待つことなく再び教室の方へ向かって歩き始めた。