「あれ?愛奈ちゃん、でいいんだよね?」

「あっ、うん。そう」

「よかった。名前、間違っちゃったのかと思った」

ちょっとだけ不安げに首を傾げていたエマちゃんはそう言いながら優しく微笑んだ。

まるで天使みたいだと思った。微笑むその姿も、たたずまいも仕草もわたしたちとは違う。

「愛奈ちゃん、学校行きたくないの?」

「え……?」

「ずっとここに立ってたでしょ?」

「あぁ……、うん。ちょっとね」

校門の前で立ちすくむわたしに気付き、エマちゃんは声をかけてきてくれたようだ。

容姿だけでなく性格もいいなんてパーフェクトすぎて同じ人間とは思えない。

「なにか悩み事でもあるの?エマでよければ相談に乗るよ」

「え……?」

エマちゃんの茶色い瞳がわたしをとらえて離さない。

「言いたくなければ言わなくてもいいの。無理強いはしないよ。ただ……」

言葉の続きを濁したエマちゃん。エマちゃんは知っているんだ。

わたしが、誰かにイジメられていると。いくら隣のクラスとはいえ、トイレの便器に上履きを押し込まれたりトイレへ一人で向かう姿を見られていれば気付いてもおかしくはない。

でも、わたしに直接それを尋ねればわたしのプライドや自尊心を傷付けると分かっているからこうやって遠回しに聞いてくれている。

そんな気遣いが、『心配しているよ』という彼女からのメッセージに思えた。