駐車場に駆け込み、車に乗ってドアをロックする。

 正体不明の彼が今にも追いかけてくるのではないかと、気が気ではない。

「ど、ど、どうしよう。あの人、私のこと知っているのかな」

 何度も私の名前を呼んでいた。見ず知らずの人とは思えない。

「ねえ、逃げちゃった。逃げたけど、戻った方がいい? 一あの人と話した方がいいの?」

 彼は私に言いたいことがあるようだった。

「落ち着け萌奈。君は混乱している」

「だってあの人、完全に私の名前呼んでたんだもん。彼は誰? 景虎は知っているの?」

 問い詰めると、ぐいっと頭を引き寄せられた。

 気づけば、狭い車内で、私は彼に抱きしめられていた。