彼が仕事をしているところを記憶喪失になってから見ていないはずなのに、どうしてそんな光景が思い浮かぶの?
この前副社長室に行ったときは、誰もいなくて自然な表情だった。不思議で仕方ない。
もしかして私……一瞬だけど、彼のことを思い出しかけた?
「どうした? 食べないのか」
言われて、我に返って手元を見た。
コロッケの中のクリームソースが、お皿の上にだらしなく流出していた。
「う、ううん。食べるよ」
誤魔化して料理を食べる私を、彼はじっと見ていた。
その視線はまるで私の考えを探るようだった。なぜか私は、彼の記憶について、話すことができなかった。
彼はその話題を望んでいない。なんとなく、そう感じたから。



