旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~


 着替えを終えた私は、普段履いているヒールよりも少し底の高い靴で、着付け係さんの手を借りて歩いた。

 まるで歩きだしたばかりの赤ん坊のような心もとない足取りで、例の螺旋階段の前に着く。

 手すりに寄りかかるようにして私を待っていた景虎は、黒のタキシードを着こなしていた。

「お待たせ」

 着付け係さんが手を放した。なんとなく気恥ずかしくて、高虎の顔が見られない。

 メイクが完了したとき、鏡の中の自分を見てグッときたのは、彼には内緒。

 急に母や父の顔、実家で過ごした思い出がよみがえってしまったのだ。

 今まで育ててくれてありがとう……なんて、本人たちもいないのに勝手に胸を熱くした。

「……あの、景虎?」

 いつまで経ってもリアクションが返ってこないので、ついに顔を上げた。

 すると、彼は手で口元を隠していた。

「すまない。あまりに綺麗で、にやけが止まらない」

 にやけが……。

 私から顔を逸らす景虎。

 つまりこれは、照れているってこと?

「ええと、早速撮影を始めたいのですがよろしいでしょうか?」

「あっハイ!」