旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~


 彼の車に乗って着いたのは、とあるホテルだった。

 創業は明治で、戦火で一部焼失するも負けずに改築を繰り返し、今まで生き残ってきたらしい。

 中はアールデコ様式の歴史を感じるたたずまいをしており、大きな螺旋階段が目立っている。

「ここで大正時代が舞台の歴史ドラマの撮影もあったそうだ」

「へえ~。素敵だものねえ」

 こういうホテルに来たのは初めてだ。両親は純和風の旅館が好きで、幼い頃から旅行といえば旅館だったから。

「ではお二人とも、こちらへ」

 案内役の従業員が私たちを別々の部屋に案内する。

 ひとりになった途端、急に心細くなった。

「こちらのドレスと着物で承っておりますが、お間違いありませんか」

 私の着付け係と思われるパンツスーツの女性が、かかっていたウエディングドレスと振袖を見せてくれる。

「わあ、素敵」

 本心から出た言葉だった。