「どこへ行くの?」
食品や生活必需品の買い出しは、もっぱら上田さんに依頼するかネット注文だ。
彼から外に出ようという申し出は外食以外なかったので、どこへ出かけるのか予想がつかない。
「結婚式」
「えっ!」
「は、まだできないから。写真だけ、撮ろうと思って」
式は彼や社長の仕事、親戚縁者諸々の予定を合わせて決めるはずだった。
その矢先、肝心の花嫁の記憶喪失のせいで、先の見通しが立たなくなってしまった。
無理に式を挙げてボロを出すといけないからだ。
表向きには、「事故の傷が完全に癒えるまで延期」となっているが、私に外傷はほとんど残っていない。
「写真……」
「予約していたのを忘れていたんだ。いきなりで申し訳ないが」
写真、嫌いって言ってたのに。
私はじっと景虎の涼やかな目を見つめる。
もしかして、私が写真がないことを訝ったから、撮る気になったのかな。
前から予約していたというのは、彼なりの心遣いか。
「ううん、嬉しい。行くよ」



