旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~


 カシャンという無機質な音が響いた。

「あ、あのう?」

 壁に押し付けられた私を、彼の端正な顔が覗きこむ。

「懐かしいな、こうして社内で会うの」

 至近距離で見つめられると、ぼっと顔が発火したように熱くなった。

「キスしてもいい?」

 右手で柵をし、左手で私の髪から頬を滑らかに撫でる彼。

「仕事中でしょ」

 かろうじて言い返した私の唇を、景虎は有無を言わさずに塞いだ。

「んむうっ」

 漏れ出る抗議の声を隠そうとするように、彼の唇は角度を変えて侵攻してくる。

 清潔なシャツが、ネクタイが、私の胸に押しつけられた。

 景虎の匂いがする……。

 彼のキスは麻薬のように、私の思考力を奪っていく。

 ようやく解放されたときには、私はすっかり抵抗力を失い、ぼーっとしてしまっていた。

「よし、チャージ完了。これで一日頑張れる」

 優しく頭を撫でられ、ハッと我に返った。