先日はスルーした副社長室の前で、一度深呼吸をする。
郵便物を秘書室に届けるべきか一瞬迷ったけど、図書室のことを聞きたいという思いが勝り、直接押しかけることにした。
三度ノックすると、「どうぞ」と聞き覚えがある声がした。
「失礼します」
ドアを開けると、広い部屋の窓際に大きなダークブラウンの机が見えた。
社長室と同じ間取りだ。
ガラス張りの窓を背にし、入口を向くように置かれた机から、景虎はこちらに視線を移した。
「君か。どうした?」
驚いたように目を瞬かせた彼は、座り心地の良さそうな革張りの椅子から腰を浮かせる。
「庶務課です。郵便物をお届けに参りました」
封筒を笑顔で差し出すと、彼は歩いてきてそれを受け取った。
「ありがとう。突然だからビックリした」
「あはは、ドッキリ大成功! そうそう、ついでに聞きたいことが……」
話しかけているのに、景虎は私を出口まで追い立てる。
ドアに背中がついたと思ったら、彼の腕が私の背中に回る……と見せかけ、ノブについている鍵をかける。



