旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~


 ベラベラと勢いよく秘書への文句を放ったおばさんは、突然口を閉じた。自分の失態に気づいたらしい。

「でも、鳴宮さんだけは「お疲れ様です」って言ってくれたんですよ。私は覚えてます」

 必死に取り繕う姿を見ると、なんだか申し訳なくなってくる。

 なんだかんだ忙しかったから、庶務のパートさんなんて、と下に見ることもあったのかもしれない。

「よーし、私が行ってきますよ!」

 私は怖いものなんてないもの。ドンと胸を叩くと、おばさんはおずおずと景虎宛ての郵便物を差し出した。

「あの、今言ったことは……」

「あー、私何も聞いてないんで。大丈夫大丈夫。気楽にしてください」

 ついでに社内中を回ったら、見覚えのある景色にぶつかるかもしれないし。

 あっ。そういえば、まだ景虎と出会った図書室に行けていないんだった。

 郵便物を渡すついでに、どこに図書室があるか聞いてみよう。

 私は隣の席の人に声をかけ、庶務課を出た。