庶務課は地味だけど社員にとって欠かせない仕事をしている。が、精神的プレッシャーは比較にならなくらい軽い。
「あらこれ、副社長への郵便物だわ」
郵便物を各部署に仕分けしていたパートのおばさんが、老眼鏡をかけたり外したりして、何度も宛名を確認している。
取引先とのやりとりのほとんどがオンラインになったこの時代でも、毎日多少の郵便物が届く。
「あのう、鳴宮さん。これ、副社長室に届けていただいても……? 私、重役さんのフロアはどうにも苦手で」
いつもはおばちゃんが郵便物を届ける係らしい。他の部署の人は専用レターケースがあり、誰かが取りに来る。しかし重役フロアには庶務課が届けるという、変な制度があるという。
重役や秘書は庶務課に足を運ぶ暇もないってこと? なんだか高飛車だわ。景虎に文句を言っておこうっと。
「いいですよ。でもどうして苦手なんですか? 社長も副社長も普通の人ですよ」
「それは鳴宮さんがお嬢様だからそう思うんですよ! 庶民からしたらね、あの階の圧力ったらもう。秘書さんなんてつーんとすました顔で挨拶もしないし」



