結局、仕事は「とりあえず休職」ということで景虎に話を通してもらっている。

 辞めるつもりで行ったのに、自分でも意外な展開になった。

「ねえ、短時間でいいから仕事に復帰できないかな」

 日曜日に切り出すと、私服姿の彼がコーヒーを飲みながらこっちを見た。

 土日は上田さんが休みなので、彼女が作り置いていってくれたおかずを食べたり、適当に外食したり。

 今回の朝食は私がどうしてもフレンチトーストを食べたくなり、レシピを調べて作ってみた。

 けれど、景虎は甘いものが苦手だったらしく、起きてフレンチトーストを見た途端眉を顰めた。結果、それを拒否して普通の食パンを焼いて食べていた。

 どうやら自分を曲げない主義の人らしい。

 嫌いな物を無理やり食べてほしいとは思わないけど、まだ新婚だよ? 「君の作るものなら何でも食べられるよ」とか言ってくれるかなって、少し思っていた。

 恋愛経験が少ないからか、夢を見すぎというか……相手に期待しすぎなのかも。