旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~


 背の高い綺麗なお姉さんは、私を抱きしめた。顔が、ちょうど胸の谷間に埋まった。

 んん? この感触、知っているような……。

「原田さん、ドアを閉めて。外に聞こえます」

「あ、すいませーん」

 冷静な声が部屋の中から聞こえた。原田さんと呼ばれた綺麗なお姉さんは私を離し、ドアを閉めた。

 完璧に描かれた眉毛、くるんとしたまつエク、黒目コンタクト。

 見れば見るほど、頭の中から何かがじわじわと湧き出してくるような感覚がする。

 原田さんと一緒に仕事をした記憶が私の頭の中に残っている。そんな気がした。

「綾瀬さん……いえ、今は鳴宮さんでしたね。突然のことで驚きました。身体の具合はいかがですか」

 持っていた受話器を置いてこちらを見たのは、メガネをかけた男の人。四十代半ばくらいで、まさにベテラン秘書といった風情だ。

「ええあの……頭以外は非常に元気です。突然休んでしまい、申し訳ありませんでした。お見舞い、ありがとうございました」