旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~


 七時に家を出た景虎から遅れること三時間、事前に約束した時間に合わせて家を出た。

 タクシーに乗り、彼が勤めると同時に私の職場でもあった会社へ向かう。

「……見たことあるような、ないような……」

 まるごと会社の持ち物だという巨大なビルを見上げても、はっきりしたイメージは浮かんでこない。

 だって、ビルなんてどれも一緒に見えるんだもの。

 自分に言い訳して、エレベーターホールへ。教えられた階数のボタンを押す。

 そういえば、景虎と出会った図書室はいったい何階にあるんだっけ?

 頭の中に本が並んでいる光景をイメージしてみる。が、やはり具体的には何も思い出せない。

「やーめた」

 いちいち思い出そうと努力することに疲れてきたわ。

 エレベーターの中で固まりそうな肩を回し、ドアが開くと同時にさっさと歩き出した。

 返却するために持ってきたICチップが入った社員証をモニターにかざし、重役フロアの二重ドアを開く。

 電子音がして開いたドアの中には、絨毯が敷かれた廊下が続いている。