置いてあった仕事用バッグをつかみ、まるで逃げるように景虎は出かけてしまった。
「もう、なんなのよ」
可愛い可愛いと家事もさせずに甘えさせたと思えば、都合の悪そうな話題であっさり逃げていく。
携帯を持ってほしくないというのは、私を愛するあまりの独占欲の表れ? そこまで都合のいい解釈はできない。
監禁癖のあるモラハラ夫だったらどうしよう……。
腕を組んで考え込んだけど、すぐに嫌になった。
結局会社に行くことは承知したんだから、徐々に外に出る回数を増やすことは可能だろう。
彼は心配性なだけ。きっとこんな状態も、もう少し落ち着くまで。そう思うことに決めた。



