「ご両親を責めないでくれ。全部俺が考えたことだ」

 車は無事にマンションに到着した。ふたりで玄関を開けると、上田さんが出迎えてくれた。

 上田さんは私の姿を見るなり、目を潤ませた。私が家を出て行ってしまったのは自分のせいだと気に病んでいたらしい。

「やだ、上田さんは全然悪くないのに」

 無事に帰ってきたことを喜んでおいおい泣く上田さんの背中をさする。

「そうだよ。記憶を失くしているのに、誘われてホイホイ出て行く萌奈が悪いんだ」

「それはもう言わないでよ……」

 私の考えなしの衝動的な行動が、みんなに迷惑をかけてしまった。それは申し訳ないと思っている。

 気を取り直した上田さんは、いつも通りのおいしい手料理を用意し、お風呂を沸かすと笑顔で帰っていった。

 心からホッとした夕飯のあと、景虎は一緒にお風呂に入ることを提案してきた。私は恥ずかしながらも、了承した。

 湯船の中では、彼の方を直視できない。代わりに聞きたかったことを尋ねる。