カフェで大騒ぎしたあと、私は景虎のマンションに戻った。

「そういえばどうしてあんな時間に都合よく現れたの?」

「君が待っていると思ったら、我慢できなくて。今日分の仕事をマッハで終わらせて来てみたら修羅場が繰り広げられていた」

 彼からしてみれば、いるはずのない綾人が偶然居合わせたことの方が驚きだったらしい。それはそうだ。私だって驚いた。

「俺が来なかったら、また殴られていたかもしれない。少しは危機感を持って行動してくれ」

 マンションに向かう車の中で、軽く叱られた。私はうなだれる。自分でもなんであんな行動をしてしまったのか。

「だって腹が立ったんだもの」

 私は景虎に、綾人と女性の会話をモノマネしながら説明した。景虎は苦笑してうなずく。

「あいつの人間性は、君よりずっと先に知っていた。今さら驚きはしないよ」

 そうして彼は、長い長い話を始めた。図書室で出会った私にいつの間にか惹かれていたこと、表紙カバー裏のメッセージに気づいたこと。

 綾人の身辺調査をしたこと。私が記憶喪失になったとき、両親を説得して、偽装結婚を企てたこと。