「そう。あまりにバカにされたものだから、カッとしちゃって」

「芸術的な模様だ。最高だよ」

「そこ、褒めるとこ?」

「冗談に決まっているだろう。だからひとりで行くなといったんだ。逆上させるやつがいるか。まったく、君はおとなしそうに見えて突然大胆な行動をとるんだから」

 周りに人がいるのを忘れたように、彼は私を遠慮なくギュッと抱きしめた。

「いけない子だ。今後は俺から離れないように」

 怒鳴った勢いでの告白を聞かれていたのかしらん。前よりもっと甘ったるくなったような彼の低い声に溺れる。

 景虎の背中に手を回して、抱きしめ返した。私だって、もう二度とあなたを離さない。