「萌奈は俺にとって、最高に可愛い妻だ」

「あ、わ……」

「最愛の妻に暴行を加えられたら、黙ってはいられない。法廷での闘争も辞さないが、君はどうする?」

 景虎の本気が伝わったのか、綾人は死人のように顔を土気色にして首を横に振った。

「では、今後一切萌奈と萌奈の家族に接触はしないと、書面を作ってもらおう。近いうち、弁護士を君の元に遣るから」

「そんなことしなくても、もう、そんな女どうでもいいよ。いらねえよ」

「いいや、あいにく俺は君を信用できるほど、お人よしではないからね。書面がないと安心できない」

 ぐうの音も出ない綾人に背を向けた景虎は、まるで別人のような優しい顔で私をのぞきこむ。

「怪我はなかったか?」

「うん」

「あれは君がやったのか」

 ちらりと視線を送られ、立ち上がりかけた綾人はビクッと震えた。彼の黄色のアロハシャツには無残な染みができている。