のんびりした午後だなあ……。こんなにのんびりした時間を過ごすの、いつぶりだろう。
序章を読み終えたところで、新しい客が入ってきた。「いらっしゃいませ」という店員の声が背後で聞こえる。
「コーヒーと……」
「あ、私絶対紅茶。と、ケーキも!」
「はいはい」
付き合っている男女のような会話。いったいどんなお客がきたのだろうと少し気になった。
いけないいけない。人間観察をする方はいいけれど、される方は気分よくないよね。
文庫本に意識を戻し、物語を読み進める。が、やけに大きな女性の声が集中を途切れさせた。
「もうさー、そんな面倒臭い女とは別れればいいじゃーん」
さっき入ってきたカップルらしき客だ。若い女性の声は不満を露わにしていた。
ん?「別れればいい」ってことは、ふたりはカップルじゃないのかしらん。
気にしちゃいけないと言いつつ、聞き耳を立ててしまう。
「そんなわけにはいくか。あの大病院の娘だぞ。あれと結婚すれば、俺は一生楽ができるんだからな」



