旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~


『記憶を取り戻すかもしれないし、諸々の手続きをする際、籍を入れていなければすぐバレる』

『ええ、そうですね。でも、お約束します。僕は彼女の信頼を得てみせます。そして彼女を一生幸せにします』

 萌奈の父が、真っ直ぐに俺を見つめた。俺の真意を必死で探っているようだった。

『萌奈がどうしてもあなたを受け入れられなければ? 偽装結婚が明らかになったとき、あなたはどうなさるおつもりですか?』

『そのときは、俺ひとりが悪者になります。綾瀬さんは俺の口車に乗せられたことにすればいい。萌奈が俺を許してくれなければ諦めて身を引きます』

 俺は萌奈に渡された文庫本を、テーブルの上にそっと置いた。綾瀬夫妻はそれに見覚えがあるようで、目を見開いた。

『これ、高校生のときに私が買ってやった本です。そのときはハードカバーだったけど、文庫版も出ていたんですね』

 懐かしそうに、綾瀬夫人が目を細める。