萌奈の仕事のことをどうするかの相談だと思ったのだろう。綾瀬夫人は了承し、約束のレストランに萌奈の父と共に現れた。
形式的な挨拶を交わしたあと、早速本題に入る。
『実は……』
俺は堺の身辺調査の結果を包み隠さず綾瀬夫妻に突き付けた。卑怯な手だと自覚はあった。
『素行がよくないと噂には聞いていたけれど……まだ若いからといって、許せる範囲を超えている』
萌奈の父は怒りを抑えているようだった。今までは「もう少し社会人としての自覚が芽生えれば、遊びより仕事に身を入れるようになるだろう」と希望を持って傍観していたらしい。
『今も海外旅行で不在とか』
『家族全員でフランスにいるそうです』
ということは、婚約者の家族に萌奈を案じる者は誰もいないということか。怒りを感じたが、逆に好都合だと自分に言い聞かせた。
『綾瀬さん、ここからは会社のことは関係なく、個人的なお願いなのですが』
『はい?』
『萌奈さんを僕に任せていただけないでしょうか』



