自分も動揺していたので、周囲が見えていなかったかもしれない。しかし、どれだけ思い出そうとしても、身辺調査の写真で見た婚約者の姿は思い出せなかった。
ぐっと拳を握りしめる。
ただ用事があるだけなのかもしれない。来られない事情があるのかもしれない。
しかし。もし俺が彼女の婚約者なら、すべてを置いてでも駆けつける。次の日にどんな用事があろうと、目が覚めるまで付き添う。
婚約者という肩書さえあれば──。
喉からせりあがってくる怒りにも似た感情を必死で飲み下し、車に戻った。
その感情が嫉妬だと気づくのに、時間はかからなかった。
萌奈が事故に遭ってから三日目のことだった。彼女の母から連絡があった。
三日間、病室の前まで見舞いに行ったが、面会謝絶とのことだった。病院で萌奈の婚約者に会うことはついになかった。
『やっと意識を取り戻しました。ですけど、少し問題がありまして、仕事への復帰はできそうになく……』



