この子は心から本が好きなのだ。それは本棚を眺める顔を見ていればわかった。
お互い無駄話はしなかったが、いつからか顔を合わせるとぽつぽつと言葉を交わすようになっていた。
いつも緊張したような笑顔を向けてくる彼女の様子が変わり出したのは、知りあって数か月経った頃だった。
『体調でも悪いのか』
先ほどの秘書のように、聞いてみた。しかし萌奈はへらりと笑い、首を横に振るだけだった。
なにか悩んでいるのかもしれない。聞いてみたいと思ったが、たまに図書室で一緒になるだけの俺にそんなことを聞かれても困るだろうか。
人付き合いが苦手な俺は、いつ一歩を踏み出すか考えあぐねていた。実家に帰る機会があったときに、父にそれとなく聞いてみた。
図書室で会う秘書がいるのだが、どんな人なのかと。父も萌奈のことは気に入っているらしく「頑張っているよ」と好意的に話した。
父から、萌奈の実家が病院であること、コネ入社で嫌な思いをしていることもあるようだが頑張っていることなどを聞いた。



