静まり返った図書室で、閲覧用の椅子にどかりと腰かけた。
ぼんやりと本棚を眺める。その陰から萌奈がひょっこりでてくるような気がして、目頭を押さえた。
どうやら、だいぶ疲れているらしい。寝不足の頭では本を読む気にもならなかった。
まぶたを閉じ、背もたれに体重を預けた。インクや紙のにおいが、ここで萌奈と過ごした時間を思い出させる。
最初、この図書室に迷い込んできた萌奈を見たときは、特に何も思わなかった。父の秘書だということも知らなかった。
『あの、ここって一般社員も使っていいんでしょうか?』
遠慮がちに聞いてきた黒目がちの瞳は、キラキラと輝いていた。まるで、宝島を見つけた子供のように。
『もちろんだ。ただし、業務で資料が必要な場合以外の利用は、休憩時間か終業後に限る。仕事をサボるなよ』
『はい!』
利用の許可をもらったことがそんなに嬉しいのか、萌奈は元気に返事をした。その声が大きかったので、俺は「しっ」と唇の前に人差し指を立てた。



