自分の部屋に入ると、まるで何年間も帰っていなかったように、なにもかもを懐かしく感じた。
使い慣れていたベッド。小さなサイドテーブル。ひとつだけ存在感を放つ大きな本棚。
ぴっちりと本が詰まった棚の隅に、ちょうど一冊分のスペースが空いていた。景虎に渡したあの本を入れていたスペースだ。
私はチェストの上に無造作に置かれていた充電器を取り、古い携帯を充電した。新しい携帯の充電器はマンションに置きっぱなしだったけど、母のものが同じタイプだったので、それを使わせてもらうことにした。
コンセントに二台の携帯を繋ぎ、電源を入れた。するとすぐに着信やメッセージの到着を知らせる通知音が二重に鳴った。
まず古い携帯の履歴を見る。ついこの間までこの番号が生きていると思いこんでいたのだろう。綾人からの着信やメッセージが何件も入っていた。
『どうして電話に出ない?』
『返事くらいしろよ』
『お前の親から婚約破棄との連絡があったが、納得できない。このまま無視するようなら訴える』
と、私を責める言葉の羅列。



