まだ若々しさを残した母の目が、私をまっすぐにとらえる。
「景虎の気持ち……」
なにかが腑に落ちたような気がした。そうだ、私は景虎に嘘を吐かれていたことがショックだった。
どうして付き合ってから結婚したなどと嘘を吐いたのか。本当は私をどう思っていたのか。一緒に過ごした日々は、全部虚構だったのか。
「そうかもしれない」
私は景虎の本当の気持ちが知りたい。その上で、これからどうするかを決めたい。
「なら、私が色々と話すより、景虎さんに聞いてちょうだい。彼は本当のことを話してくれるはず」
「お母さんはそう思うのね」
「ええ。私は景虎さんのことを信用しているわ」
言葉の裏を読むと、母は綾人のことは信用していないように聞こえる。実際、そうなのかもしれない。夢の中……取り戻した記憶の中で私は、綾人との結婚を迷っていた。
「わかった」
いつの間にか緊張は解けていた。母が淹れてくれた緑茶の香りのおかげかもしれない。
「じゃあ、今から景虎のところに行くね」
腰を浮かせた私の腕を、母がガシッとつかんだ。驚いて見下ろすと、母はものすごい剣幕で言った。



