「それより、話をしたくてきたの。昨日は記憶を取り戻したばかりで混乱していてごめんなさい」
ひどい態度をとったことを謝ると、母は隣に座って首を横に振った。
「そりゃあ、あなたにとってみたらわけのわからないことになっていたんだもの。無理ないわ」
ちっとも怒っていない様子の母に、ますます申し訳なくなる。でも謝ってばかりじゃ話が進まないので、本題を切り出すことにした。
「どうして私は景虎と結婚することになったの? どうして綾人さんのことを隠したの?」
景虎との政略結婚の方が、両親に都合がいいとして。いつも真面目な両親なら、綾人とのことをきちんと決着をつけてから、次に進むはず。しかし今回はそうではなかった。
「それは……あなたに幸せになってほしかったから」
「幸せに?」
こくんと母はうなずいた。「なにから話せばいいかしらね」と、母は遠くを見た。
「景虎さんに任せた方が、あなたを守れると思ったの」
「どういうこと? 詳しく話して」
詰め寄ると、母は困ったように眉を下げる。
「これ以上のことは、景虎さんに聞いた方がいいわ。あなたが本当に知りたいのは、景虎さんの気持ちじゃない?」



