実家の鍵は、景虎のマンションに置きっぱなしだ。私は思い切って門のインターホンを押した。
『はーい、どちらさま……あっ!』
向こう側から聞こえたのは、まぎれもなく母の声だった。昨日思い切りつっけんどんな態度をとってしまったので気まずいけど、仕方ない。
「開けてくれる?」
聞いている途中で、ブツッと会話が切られた音がした。そりゃあさすがの母もあの態度じゃ怒るよね。
もう一度トライしてみようかと、インターホンに指を近づける。するとまだ押していないのに門の格子が電子音と共にゴロゴロと開いた。
その奥に、母が立っていた。急いだのか、少し息が上がっていた。
「なに突っ立ってるの。早く中に入りなさい」
母はいつもと変わらぬ顔で、手招きをする。うなずいた私が敷地内に足を踏み入れると、背後で格子が閉まった。
門から玄関まで、父の趣味で作った日本庭園を横切っていく。庭師が整えた木々は、私が事故に遭う前と同じフォルムを保っていた。



