どうやら、会社の図書館で知り合い、ちょくちょく顔を合わせていたという景虎の言葉は嘘ではないらしい。副社長と社員、というより読書仲間に対するように景虎は話した。
「すみません。今日は私のおすすめの本を、是非読んでいただきたくて」
差し出した手が持っていたのは、マンションの図書室でも見つけた、私の大好きな作品だった。片手で受け取った景虎は、パラパラと中身をめくって飛ばし読みする。
この光景、昼間も見た。白昼夢のようだったけど、やはり実際に起きていたことなのだと実感する。
ただの思い込みから成った夢だとすれば、細部にわたって同じということは少ないように思える。
「なんだか、子供っぽい内容だな」
「ちゃんと読んでください。人を愛することとはどういうことか、副社長にもわかってもらえるはずです」
「君は俺をどう見ているんだ」
「別に、みんなが言っているような冷血サイボーグだとは思っていませんよ。ただ、ちょっと人との接し方が雑なだけですよね」



